大自然としてのガネーシャ神

人間の体に象の頭を持ち、大きな太鼓腹をしたガネーシャ神は、そのユーモラスな姿から、日本でもベストセラー書籍の題材になり、関西弁を話す不思議なキャラクターとしてテレビドラマに登場したことがあります。

あらゆる障害を取り除く神として、新しい事業を始めるにあたって最初に祈りが捧げられる神だとされています。

仏教を通しても、歓喜天(かんぎてん)、聖天(しょうてん)として日本に伝わっていて、日本各地の寺院で礼拝されています。

ガネーシャの礼拝の功徳については「事業の困難を除去し商売繁盛をもたらす」、「学問の神として学識をもたらす」などがあり、こうした功徳を得るための礼拝は一般的な礼拝の方法であり、何も間違っていません。

しかし、ここでは一歩進んだ霊性修養の実践者のための、瞑想の対象としてガネーシャ神を礼拝する方法を紹介します。

インドの神々は、多くの名前を持ち、ガネーシャはスムカ(Sumukha :सुमुख)とも呼ばれます。

スムカは「美しい」という意味で、これはガネーシャ神のこのうえない「美しさ」を表しています。

ガネーシャ神はもともと象の頭を持っていたわけではなく、最初は人間の姿をしていて、その美麗さは最高のものだったと言われています。

そしてこの美しさは「母なる自然の美しさ」そのものだとされています。

「スムカ」という名を思い、大自然の最高の美としてガネーシャを念想します。

そして「ガネーシャの太鼓腹に全宇宙が含まれている」という概念を瞑想します。

このプロセスは、神の持つ「名」と「形」の背後にある実在相へとアプローチし、深い集中によって瞑想の主体と対象を結び一つにするヨーガの手法です。

人間の背骨の基底部から頭頂へ向けて背骨に沿って存在するエネルギーの道は「スシュムナー・ナーディ」と呼ばれ、この道が成就される時、人間という小宇宙において地と天が結ばれ、本当の人間が完成します。

このスシュムナーの脊柱基底部にあるエネルギーセンターは、「ムーラーダーラ・チャクラ」と呼ばれ、ガネーシャはこのエネルギーセンターの主宰神です。母なる自然のすべての力が眠っています。

エネルギーを上昇させ、頭頂の頂点へと達するのは、天と地、父と母が結ばれる「結婚」に象徴化されるヨーガ的なプロセスです。

この道には人間が経験するありとあらゆる達成と困難が含まれています。

ガネーシャは、このスタート地点を保護する者であり、そして道の途上の障害を除去し頂点へと導く案内人であり、そして最終的なゴール地点(ガネーシャ神は、シヴァ神とパールヴァティ神が結ばれた結果に誕生する)でもあります。

ガネーシャへの瞑想は、最初と中間と最後のすべてを含み、一切万物の美そのものであり、一切の全てである実相と私たちを一つにする非常に重要なプロセスだと言うことができます。

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