2024年米大統領選挙 トランプvsハリス

ドナルド・トランプ氏とカマラ・ハリス氏の対決となったアメリカ大統領選挙ですが、ヴェーダ占星術で二人のホロスコープを分析するとどうなるでしょうか。

まず二人のナクシャトラですが、トランプ氏はジェーシュタ、ハリス氏はアシュヴィニーです。

ここで注目すべきは、両者ともにガンダーンタのナクシャトラにあることです。ガンダは「結び目」を意味し、アンタは「終わり」を意味します。これは月の道の中にある段階と段階の間にある結び目であり、解く事が難しい結び目です。このナクシャトラを持つ人々は、次の意識の段階に進むための困難や不確実性に出会います。

特にトランプ氏の場合は、月がジェーシュタの4パダにあり、結び目と惑星が非常に近くにあります。そのため彼はこの人生において次のステージに進むための強烈な苦闘を経験します。蠍座と射手座の間にあるガンダーンダは特に難しいものであり、物質的な繁栄を極めたパーソナリティが、それを超えた霊的・形而上学的な方向へ転換するための揺さぶりを経験します。ジェーシュタを象徴するのは「傘」や「イヤリング」であり、この「傘」は社会的地位の高い人に掲げる際の「傘」です。これらの象徴は地位やステータスの高さを表します。また、ジェーシュタを支配する神格は「インドラ」であり、神々の王です。「不動産王」と呼ばれ、億万長者であるトランプ氏は、ジェーシュタの特徴をよく表した典型例と言えそうです。

一方のハリス氏は、アシュヴィニーですが、アシュヴィニーは27宿の最初に来るナクシャトラであり、古い周期が終わった後の新しい周期の始まりを意味するナクシャトラです。彼女が大統領になった場合、アメリカ初の女性・アジア系大統領となりますが、彼女のナクシャトラはそれにふさわしいナクシャトラと言えます。アシュヴィニーを支配する神格は、アシュヴィン双神であり、医術と神とされ、このナクシャトラを持つ人は「癒す力」を持ちます。ハリス氏は、大統領候補者として指名を受けた受諾演説で「分断を乗り越え新しい道を切り開く」と訴えました。ナクシャトラが表す性格から、彼女は性別や人種によって分断されたアメリカを癒し、統合する理想を持つと言えます。アシュヴィニーの象徴は「馬」であり、これはすばやさやパワーを表します。これはハリス氏が民主党大統領候補として急浮上したことと、無関係ではないでしょう。

ラグナに目を向けてみると、トランプ氏は獅子座ラグナであり、獅子座の支配星である太陽は、10室に位置し、太陽にとって強い方角と位置にあります。またトランプ氏は、星の強さを示す太陽のシャドバラ値が突出して高いです。大統領のような最高権力の地位に就く人物は、太陽のシャドバラ値が高い傾向にあります。クリントン氏、ジョージ・ブッシュ氏、オバマ氏など歴代のほとんどの大統領は太陽のシャドバラ値が非常に高いです。バイデン氏は少し例外となっています。トランプ氏は、獅子座であり、そのラグナロードである太陽が10室にあり、シャドバラ値が高いことによって、まさに権力者らしい星の配置を持っていると言えます。

さらに太陽が在住する10室に、ラーフが在住し、高揚、あるいはムーラトリコーナであり、強い力を持っています。ラーフは同じ部屋に在住する星の影響を受け、そのように振る舞うため、太陽としての力を持ちます。そしてラーフは太陽以上の力を持つため、トランプ氏の太陽として役割を果たすラーフは非常に強力です。トランプ氏が、2016年11月の選挙に勝って当選が確実になったとき、マハーダシャーはラーフ期でした。

またトランプ氏の誕生時は日食の時期でした。この太陽とラーフの組み合わせは、非常に強力であると同時に、貪欲さ、飽くなき追求、強奪等の否定的な面を持ちます。これが10室の牡牛座において形成されていることから、飽くなき権力欲、強引に物質的快楽を求める強い傾向と結びつきます。2021年の米議会襲撃事件では、トランプ支持者たちが選挙結果への不満から米議会を襲撃し、トランプ氏は反乱扇動罪で起訴されました。またトランプ氏から性的暴行を受けたとされる民事訴訟では、一審において有罪判決となり、500万ドル(約7億円)の賠償金支払いを命じられています。

ハリス氏のラグナは双子座であり、ラグナにはラーフが在住しています。アイデンティティを表す1室にラーフが在住し、ラーフは、「マイノリティ」や「外国人」を意味します。移民国家と呼ばれるアメリカですが、中心を占めているのは白人です。1960年は人口における白人の割合が約89%であり、2010年はヒスパニックを除いた白人は約64%とその差は縮まってはいます。それでも2022年のアメリカにおけるアフリカ系アメリカ人は14.9%、アジア系アメリカ人は7%となっています。ラグナに在住するラーフは、ジャマイカ出身の父とインド出身の母を持つアジア・アフリカ系アメリカ人であるハリス氏の特徴をよくあらわしています。

このラグナに在住するラーフは、双子座の支配星である水星として働きます。高揚、あるいはムーラトリコーナの位置にあり、非常に強力です。これは彼女が非常に知的で聡明であることを示しています。このラーフは、教育・高等教育の5室、高度な知識の9室にアスペクトしています。5室にはラグナロードの水星が在住し、9室では土星が在住しムーラトリコーナです。これは彼女が非常に高度な教育を受けていることを示しています。ハリス氏は、名門ハワード大学とカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロー・スクールを卒業し、検事としてキャリアをスタートさせたエリートです。

行為・仕事を表すD10チャートでも、ハリス氏のラーフは双子座に在住し、高揚、あるいはムーラトリコーナのヴァルゴーッタマであり非常な強力な形で9室に在住しています。2016年にカルフォルニア州で3人目の女性上院議員になり、2020年に初の女性・アフリカ系・南アジア系の副大統領となったのは、このラーフ期のマハーダシャーの時期でした。現在(2024年9月)も彼女のマハーダシャーはラーフ期であり、2030年までこの強力な時期は続きます。ハリス氏は、ラーフの持つ強力さと、前例を打破する力をよく表している人物であると言えます。女性やマイノリティが十分な素質や実績を持っていても昇進が制限されることを「ガラスの天井」と言いますが、2016年の大統領選でヒラリー・クリントン氏が破ることができなかった「ガラスの天井」を打ち破るのは、このハリス氏のラーフである可能性は高いと思います。

奇しくもトランプ氏が2016年11月の選挙でヒラリー・クリントン氏に勝利したのもラーフ期でした。しかし、その後まもなく彼のマハーダシャーは木星期に移りました。トランプ氏の木星は、それほど強力ではなく、行為・仕事を表すD10チャートでは、減衰しています。2020年の大統領選挙でバイデン氏に敗れた時、トランプ氏は木星期でした。そして現在(2024年9月)も彼のマハーダシャーは木星期です。しかし、アンタルダシャーは現在のケートゥ期から金星期へと変わります。トランプ氏の金星は、ラグナクンダリとD9でヴァルゴーッタマであり、D10では6室で高揚しています。これはトランプ氏の勢力を一定の範囲で再び強力なものにし、選挙において善戦を見せそうです。

2024年5月に木星が牡牛座に入ったことによって、現在、木星と土星が蠍座にアスペクトしています。トランプ氏の場合、蠍座は4室であり、喪失を表す12室の支配星である月が在住し、減衰しています。彼は1990年までに巨大な負債を抱え、所有している事業が倒産しました(カジノ1991年 ホテル1992年)。これらの多くはマハーダシャーの月期に起きています。月はトランプ氏にとっての鬼門となる惑星だと言えます。また冒頭で述べたように、彼の月はジェーシュタの4パダで、深刻なガンダーンタの位置にあります。物質世界における挫折という厳しい経験を通して、新しい意識の視野を獲得しなければならないことを示しています。

これらのことを総合的に見て、2024年の大統領選挙は、トランプ氏が敗北し、その結果としてハリス氏が勝利すると言えます。

仮にハリス氏が大統領選挙で勝利したとして、彼女のキャリアがどのようなものになるかを少しだけ見ていきたいと思います。
ハリス氏の「行為・仕事」を表す10室の支配星である木星は12室に在住しています。これは彼女の仕事の領域の多くが、外国に関わることであり、政策の争点の一つになっている移民政策(国境管理)やパレスチナ自治区ガザ地区への関わりなどを表しています。そしてそれが木星であることから、彼女はこれらの分野で理想主義的で寛容なアプローチをとります。しかし現実的にはこれは非常に難易度の高い問題となっています。法的な手続きをせずにメキシコとの国境を超えて入国してくる人々を、規制しつつ合法的な移民に変えていくための実際的な方策が必要になります。また苦難の中にいるパレスチナの人々と連帯しながら、イスラエルとも関係を維持しなければなりません。
ハリス氏自身は、9室の水瓶座で土星がムーラトリコーナであることから、包括的で友愛的なヴィジョンを持っています。しかし、国家を代表する大統領としては、抜本的で急進的なことをすることはできません。彼女の「行為・仕事」のある木星は、D9、D10において減衰しています。これは、職務において理想を現実に落とし込むうえでの苦難を表しています。ハリス氏の持つヴィジョンは正しいものであり、倫理的・友好的なものですが、それを実際的なものにしていくためには、世界のゆっくりとした進歩に妥協し、多様な勢力の中にバランスを見出すための極度の忍耐力が必要とされるでしょう。



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