七つの解放をもたらす地「サプタ・ムクティ・クシェートラ」
インドには「ティールタ」と呼ばれる水場の聖地が無数にあります。
こうした聖地は実は世界中にあるのですが、それが聖地と認知されていないため、その力が知られていない場所がほとんどです。
では、なぜインドにおいてはそのような聖地が認知されているのかと言えば、それは『プラーナ文献』という神話群に記述されているからです。
インドの数々の聖地の中でも「七つの解放をもたらす地」として知られる都市があります。
アヨーディヤ
マトゥラ
マーヤー(ハリドワール)
カーシー(ヴァーラナーシー)
カーンチプラム
アヴァンティ(ウッジャイン)
ドワールカー
これら七つの都市は、無数にあるインドの聖地の中でも特に力の強い聖地だとされています。
カーシー(ヴァーラナーシ―)
七大聖地の四番目にあるカーシー(ヴァーラナーシー)は、聖地群の中での真ん中に位置し「神のハート」の地位を占めています。
また、七大聖地を人間の内の七つのチャクラとして見ると、カーシーは眉間にある6番目のアジュナーチャクラに位置します。
カーシーは「光、輝き」という意味です。また、このカーシーは「アヴィムクタ・クシェートラ(破壊されない地)」とされています。
世界は周期の最後にプララヤという一種の破局的局面を迎え、海に沈むなどの終焉を迎えます。しかしこのカーシーは、「アヴィムクタ・クシェートラ(破壊されない地)」として、そのような時にも沈むことがない地だとされています。
またシヴァ神が自らの都市と定めたのがカーシーであり、シヴァ神の聖地として有名です。
カーシーはガンジス川流域の都市であり、ガンジス川にヴァラナ川とアシ川が支流として流れ込んでいます。このヴァラナ川とアシ川の間にある地であるため、「ヴァーラナーシー」とも呼ばれています。
カーシーで肉体を離れることができた場合、その時にシヴァ神がその人の耳に「ターラカ・マントラ」と呼ばれるマントラを囁きます。そのためカーシーで死んだ人は、生と死のサイクルである輪廻転生から解放されます。これは人間の最高の目的だとされています。再び生まれ変わることがないように、晩年の居をカーシーに定める人もいます。
聖地巡礼の秘密
こうした聖地に巡礼に行くことで、心身が清められ、さまざまな功徳を受けるとされています。ですが、この聖地巡礼には秘密があります。それは「思い」によって巡礼に行くことができるというものです。
「マントラ」「ヤントラ」「タントラ」という言葉があります。
「マントラ」は、日本にも密教を通じて「真言」として伝わっています。古代の日本では「言霊」として言葉に宿る力が、その言葉の内容を作るとされていますが、このマントラも全く同じ原理です。マントラは、「マナス(心)」「マナナ(思考)」を語源としています。つまりまず「思い」があり、それが「音」として現れたのがマントラです。
次にこの音として現れる思いが「形」を持ちます。それが「ヤントラ」です。ヤントラは幾何学的な模様と文字が描かれた金属版や、立体的なピラミッド型のものなどがあります。これは平面(二次元)で表現するか、立体(三次元)で表現するかの違いであり、基本的には同じ原理が「形」として表現されたものです。
そして「タントラ」ですが、これは何か恐ろしい魔術的なプロセスのイメージを持たれていますが、原則的にそうではありません。ある「思い」が「音」となり「形」となりましたが、これが一定の所作と原料を用いた「儀式」として表現されたものが「タントラ」です。ヤントラが静止画だとすれば、タントラは動画だと表現できます。
つまり一定の原理(思い)に対応するそれぞれの音、形、動作があり、それがマントラ、ヤントラ、タントラだということになります。そしてこれは「思い」を基礎として、それが実体化していく過程でもあります。「想像力は創造力」という言葉がありますが、それはこの過程を表す概念にぴったりの言葉です。インド神話における世界創造については、さまざまなバリエーションがありますが、「創造神ブラフマーは『思い』によって初期の創造を行なった」というのが基本になっています。
世界創造の原因と背景に「思い」があるということが、「思い」によって聖地の巡礼に行くことができる原理となっています。さらには「明確で強固な思い」は「思いを伴わない行為」より、はるかに強力だと言われています。
もう一つの秘密は、「大宇宙と小宇宙は相似的に関連し等しい」という原則です。詳しくまた別の機会に説明しますが、これは自分の身体を「聖地」と見立て巡礼を行うヨーガ的なプロセスです。
このブログでは、聖地中の聖地と言われるカーシーへ「思い」によって巡礼することができるツールとして、神話の物語という形で象徴化されている情報を紹介していきます。
ただ言葉を発するだけでも、この法則は働き存分な恩恵が生まれます。「カーシー、カーシー」という言うだけで存分な功徳があると経典は伝えています。
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